※本記事はメディア等で報道されている記事やレポートを見ながら総合的な視点で考察を立てたものであり、一部事実と違い、個人的な憶測も交じっている可能性がある事を予めご理解頂き、ご興味ある方は記事を読み進めて下さい
2020年1月31日現在、新型コロナウィルスの影響を受け、アジアでのクルーズ事情が大変な事になっているのは、このサイトファンなら誰しもご存知の事と思う。
近年、国土交通省では、年々のクルーズ需要急増に鑑み、【訪日クルーズ旅客を2020年に500万人】という目標を掲げていた。
そもそも今回の新型肺炎問題が発生する以前から私が疑問に思っていたことは、 「国策として明確なビジネススキームも無い(と思われる)のに、何故500万人という目標が掲げられるのか」 という事だった。
この500万人という目標値。
2013~2017年の訪日クルーズ旅客の実績棒グラフを見れば、 「単純に前年数×1.25倍程度を年々掛け算したな」と疑ってしまう様な、ファウンデーションが不明確な希望的数字だという事が透けて見える (あくまで私の憶測)。
ここでいうファウンデーション(基礎・土台)とは、 ・各国の訪日率(中国人観光客に偏重している需要構造が明白) ・アジア海域へのクルーズ船配船数の見通しとキャパシティ ・受け入れ港の整備数と日程的ダイアグラム ・クルーズ船乱立とクルーズ商品乱売による淘汰~整理 上記は一部の事項だが、これらの市場構造を多角的に組合せた上で、将来予想~目標値とならなければいけない。
そして2017年以降の結果はどうなったか。
結局中国マーケットでの配船乱拡によりクルーズ商品単価も低下、各社の収益も悪化、配船と旅客費用の調整などが入り、そもそも中国需要をアテにしていた訪日クルーズ旅客だけに、訪日人数は頭打ち~2年連続の減少となった(約245万程度で頭打ち、と言う状況)。
クルーズ船の寄港回数は訪日人数ほどの減少は無いものの、例えば瀬戸内海だけで運行している国産高級クルーズ船【GANTU】のホームポートである『ベラビスタ境ヶ浜』などが回数を急増させていたりするので、ちゃんと日本船と外国船籍船を切り分けて考えないと、本来の需要を見誤る。
そう、つまり今回の感染問題を差し引いても、とても【2020年に500万人】は、困難な目標だったのだ。
マーケットや需要というのは予測の出来ない不可抗力によって大きく読みを外してしまう事は避けられないものの、需要構造の偏りであったり、その旅行形態が何によって左右されるリスクがあるか、そしてその規模は如何ばかりか…そんな悲観的な推測も含め【下限値目標】というのも同時に計算しておくべきである。
今現在、最も懸念されるのは「現在の感染問題の収束の先が見えない」事だろう。 現実は解決が早かったとしても、風評被害によって意味も無く長期化を強いられる場合もありうる。 これはクルーズ業界に関わらず、全旅行業、全経済に大きな打撃を与える事柄だが、利用量が単純に減少するだけの鉄道などの陸上公共機関や、空室が発生した分多少なりとも国内需要でリカバーできるホテル業とは訳が違い、クルーズ船は『顧客が出向いていく旅行』ではなく、『顧客を迎えに行って乗機させる旅行』である。 つまり感染が懸念される港に立ち寄らざるを得ないというリスクを抱えている上に、その港からは【旅客ゼロ】で、物資のみの運行で航海しなければならない現在、クルーズ船乗組員や、その親会社の苦悩は計り知れない。
日本の、そしてアジアのクルーズ需要が減少するのは私自身胸が痛む話だが、暫くはその寄港地を大きく見直し、航路をシフトして営業を継続し、収束するのを待って、いずれ戻ってくるのも一考ではないかと思う。
そして2020年に訪日クルーズ旅客500万人の目標は確実に取り下げるべきである今、逆風の今だからこそ落ち着いて、寄港地環境の現状と将来を整理し、カジュアル船やプレミアム船に加え、国内進出著しいラグジュアリー船も含め、フネと航路と寄港地と旅費のバリエーション豊かな、「単純な量の時代から→選ぶのが悩ましいほどの種類と質の提供」で日本のクルーズ需要構造をリフォーム、アップグレードして欲しいと願わずにはいられない。 国内周遊クルーズ僅か5回の私ですら既にマンネリ化を強く感じているくらいなので、クルーズ旅行練達者の先輩諸氏の思いは更に切実なものではないだろうか。
随分自由に書かせて頂きました。個人的見解も大いに含んでおり、気分を害した方がいましたらご容赦願いたい。
--------------------------------------------------------福山 美洋
コメントを投稿する
コメントを書く