都市伝説とは、大修館書店の明鏡国語辞典第2版によれば「現代の都市で生まれ、広く口承される根拠のない噂話(うわさばなし)」とのことですが、旅行社のクルーズ説明会やテレビのクルーズ紹介番組等で良く聞くのが「クルーズ船はほとんど揺れないので乗り物に弱い方でも大丈夫です。」という甘い言葉。
まして、「船酔いもしません」とまで言ったらそれはほぼ詐欺行為と思って良いでしょう。
常識的には、どんな巨大クルーズ船だって海の水に浮いている以上、それを浮かせている水が動けば揺れる訳で、ほとんど揺れない!は真っ赤な嘘とまでは言わないまでも理論的ではないと思うのですが、悪いことに某船社のクルーズガイドを見ると「船酔いが心配です」という質問の回答に「横揺れを防止する装置(フィン・スタビライザー)を装備しておりますのでご安心ください。ご心配の方は、船酔いに備えてご自身に合った酔い止め薬をご持参ください。」と書かれています。
これでは、初めてクルーズ船に乗る人が「クルーズ船って、旅行社の説明の通りほとんど揺れないんだ!」と思って当然。
本当に親切な回答なら「船には横揺れを防止する装置(フィン・スタビライザー)を装備しておりますが航海の安全に支障のない程度の揺れは常に発生いたします。少々の揺れもクルーズの楽しみの一つとお考えいただき、初めてご乗船の方やご心配の方は船酔いに備えてご自身に合った酔い止め薬をご持参ください。」と書くべきでしょう。
こんな、私には都市伝説としか思えない「ほとんど揺れない」という話しがまかり通っているのは、船としては大型に属するクルーズ船は国内航路の小型貨物船なら波を被って減速を強いられる程の白波が立つ海(写真参照:駿河湾の飛鳥Ⅱから撮影)ぐらいなら実際にほとんど揺れないのと大荒れしそうな海域を極力さけるクルーズ業界の運航方針、そして、本職の船乗りからみれば少々の荒天でのクルーズ船の揺れなど揺れのうちに入らないからじゃないでしょうか。
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私がクルーズ船で体験した荒天時のローリングといわれる横揺れの傾斜度はフィン・スタビライザーが作動している事もあってか、体感ですがせいぜい7~8度、それでも連続した左右の揺れですから廊下を真っ直ぐ歩けなくなるのに、外洋航路の一般商船だったら10度以上は当たり前で20度以上の傾斜も珍しくなく、まれに30度を超えることもあると聞いています。
それにピッチングといわれる縦揺れは、クルーズ船としては小さな部類の「にっぽん丸」でも全長166.6mあるのに、波長との釣り合いで船の全長が150m以上なら酷い揺れは起こさないといわれていますから、本職の船乗りから見れば「揺れる」というレベルではないというわけです。
これは、日本船主協会のホームページに有る海運雑学ゼミナールのNO.11の末尾に「全長150メートル以上、フィン・スタビライザー付きの船に乗る限り、船酔いに悩まされることはまずないというわけである。」と記載されていることからも分かります。
しかし、船の揺れはローリングとピッチング以外に左右に揺れるヨーイング、上下に揺れるヒーピング、左右に揺れるスウェイング、前後に揺れるサージングの計6種類が有るといわれ、それらの複合が本当の揺れになります。
また、荒天というほどでなくても波が高いときにたまに起きる、大きな波が船首とぶつかって音を立てるパンチングという突発的な揺れもありますし、晴天でも船の進行方向の斜めや横方向から大きなうねりが来ている場合に結構発生するヨーイングの一種、船首揺れも発生します。
そういうわけですから、クルーズ船はほとんど揺れないのではなくて、荒天では一定程度揺れるけれども一般商船に比べたら軽い揺れで航海の安全安心に影響がない、というのが真実でしょう。
それですから、旅行社や船社は実際には揺れるのに揺れませんと強弁するよりも大型船独特のゆったりとした揺れで遊んで貰えるような企画を考えてはどうでしょうか?
個人的には、船首方向のポールや手すりを見て、その日の揺れの最大角度を推測投票してもらい、賞品を出す最大角度当てゲームなんていうのも有りだと思うのですが?
なお、自律神経系のバランス異常?といわれる船酔いと船の揺れの関係は、結構微妙で、波の静かな凪の航海でも船は微妙に揺れているので本当に弱い人は酔ってしまうとか。
一方、特異体質なのかどんな荒天でも全く酔わない人もいるそうですが、本職の船乗りでも荒天での航海が続くと酔うそうですから、船酔いしそうな人や初めて船に乗るという方は乗船前に服用して揺れに備えておくのが正解のようです。
ちなみに、私は海に関するボランティア活動や知人の手伝いで20年以上前から毎月小型艇に乗って東京湾をうろついていますが、クルーズ船で全く船酔いしないかというと軽度ですが酔ったなと思う事があります。
それは何故か?という話しはまた後日書かせていただきます。
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