スカンジナビアの思い出

昨日に引き続き、もうすぐ日本を離れるスカンジナビアのお話です。

今回は、わたし自身とこの船の関わりあいを書きたいと思います。

最初にこの船を訪れたのはもう３０年も前でしょうか？たしか沼津から船で三津まで行き、そこから海岸線を徒歩で十数分かけて歩いて行ったように記憶しています。

小さな岬をまわってこの船の美しい姿が静かな入り江の向こうに見えたときはそれは感動でした。

入場料数百円（飲み物付き）を払って数時間の至福のときを過ごしました。

やがてわたしもポンコツ車を手に入れ、覚えたスキューバ･ダイビングをやるために何度も西伊豆を訪れ、そのたびに潜り仲間と帰り道にこの船でお茶をして行ったものです。

夏の夕暮れのデッキは疲れを忘れさせてくれる憩いの場所でした。

当時付き合っていた女性と二人っきりで訪れたことも何度かあります。そういえば全部違った相手でしたねぇ。

結婚後、３回目の結婚記念日に念願のはじめてお泊り体験。平日だったせいもあって宿泊客も少なく、一番安い部屋を予約したにもかかわらず、スイートに泊まることが出来て大ラッキー！。

食事はもちろんメインダイニングで北欧風ブッフェ（バイキング）のスモーガス･ボードに舌鼓を打ち、食後はラウンジでジャズバンドの生演奏。それも客はわたしたち夫婦だけ。バンドは二人のためにずっとスタンダードナンバーを演奏し続けてくれました。

子供が生まれてからも海水浴で伊豆に行くたびに必ず立ち寄り、妻にいいかげんあきれられていました。

そして最後にこの船を訪れたのは昨年の３月２９日、閉鎖になる２日前です。証拠のチケットを貼っておきます。無料なのになぜかこのチケットをくれました。

このときは子供の春休みの家族旅行で妻の両親ともどもこの船に乗り込み、船内をくまなく見てまわりました。

ガラス細工の窓や調度品、レリーフ。前部デッキのシップベル。寄木細工の壁画。大径の舵輪。超一流の北欧家具の数々。

そのひとつひとつをじっくりと眺め、指先で触れてその感触を確かめながら、この船とわたしとの最後の時を過ごしました。

またいつかどこかで会えることを祈りながら・・・

その後、清水港にザ･ワールドを見に行った帰りにここに立ち寄り、海岸からその姿を眺めて帰りました。

３０年前、はじめてこの船を見たときの美しさは、このときも少しも衰えていませんでしたが、少し錆が出て、心なしか右に傾いて見える船体は寂しさをそそりました。