中国・武漢で新型コロナウイルス感染が発生し、半年も経過していないのに世界で310万人以上の人が感染し、いまだにいつ収束するか分からない状況なので世界中でクルーズ船は運航を休止している。
クルーを客船で帰郷させる特別策を実施
クルーズ船の乗組員は長期間乗務したあとは長期休暇をとって帰郷する。通常ならばどこかの下船港から定期航空便に乗って帰国するが、現在は新型コロナウイルスが世界中に感染拡大したため飛行機の国際便も殆ど飛んでおらず、帰郷したくても帰郷できないのが現実だ。またクルーズ船は錨を降ろしていても動力源を得るために最低限の燃料を消費するし、停泊料も支払わなくてはいけない。
そんな状況下でクルーズ船社が経費削減を兼ねて思い切った苦肉の策を考え実行しているようだ。 ホーランドアメリカラインはニューアムステルダム、ビーンダム、フォーレンダムにアジア系乗員を集め、フィリピン、インドネシア、インドを経由して南アフリカの自宅へ送り届けさせている。プリンセス・クルーズではシー・プリンセスでフィリピンの乗組員を送り届け、ロイヤルカリビアンクルーズでもボイジャー・オブ・ザ・シーズでフィリピン人乗組員をマニラまで送り届けている。
コロナウイルス禍でクルーズ船が世界中で休止状態になっているので現在のクルーズ船の所在位置を確認しようとAIS(船舶自動識別装置)情報でフィリピン海域に注目し調べてみた。 現在スペクトラム・オブ・ザ・シーズ、クワンタム・オブ・ザ・シーズ、シー・プリンセス、コスタベネチアがフィリピンの港に寄港している。また長崎の造船所で停泊中だったコスタセレーナやコスタネオロマンチカもフィリピンに向かっている。
フィリピン人クルーに支えられているクルーズ業界
フィリピンではかつては日本国内で運航されていた多くの中古フェリーが活躍しており概して中古船が多い。フィリピン人乗組員は威風堂々とした大型客船に乗ってフィリピンに帰れば故郷に錦を飾ったような気分になるに違いない。 クルーズ船ならホテル、長距離交通手段にもなるので多くの乗組員を希望通りに里帰りさせてあげられる。日頃は乗船客のために尽くしている乗組員は束の間のクルーズ客気分が味わえ、船会社も経費節約にもなり一石二鳥だ。こんなまたとない機会なので乗組員にはクルーズ船による里帰りで英気を養ってもらいたい。 フィリピン人乗組員は飲食部門やルームサービス部門などで活躍しており、クルーズ船ではなくてはならない存在だ。個人的にもフィリピン人乗組員には今まで体験したクルーズで最もお世話になっているし、同じアジア人同士であるので最も親近感を感じている。世界中でフィリピン人ほどフレンドリーかつサービス精神旺盛で音感が良くクルーズに向いた乗組員はいないと思う。
コスタアトランチカ乗組員の感染者が長崎で発生したためにコスタセレーナとコスタネオロマンチカは疫病神のような扱いを受けて日本から遠ざけられフィリピンに向かっているのが何とも哀れである。今まで揉み手で入港を歓迎していたのに手のひらを返したような一変した日本側の対応はいかがなものかと考えさせられる。
実は寄港地としての魅力が高いフィリピン
海に囲まれ美しい島国のフィリピンなのに今までクルーズ船がフィリピンに寄港するコースは殆どなく不思議に思っている。フィリピンで日本人に馴染みがあるのはマニラかセブ位しかないが、海が美しいミンダナオ島やネグロス島などの観光名所もあり、クルーズの寄港地になれば魅力的だ。
世界中に感染拡大したコロナウイルスが収束して飛行機の国際便やクルーズ船の運航が再開される見通しはまだ立っておらず状況は厳しいが、一刻も早く世の中が元の状態に戻って欲しい。暫くは船も客も冬眠しながら充電し、英気を養って職場復帰した乗組員によるサービスで蘇ったクルーズを楽しみたいものである。 また沖縄、台湾、フィリピンを巡るような日本発着クルーズが実現したら是非とも乗りに行きたい。
親切でフレンドリーなフィリピン人クルー
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