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クルーズが恋しくて

シリーズ  All About Cruises

失われた夏を求めて

長年、趣味は何かと問われるたびに苦痛を感じていた。履歴書の趣味欄には仕方なく、そして無難に読書と書いていたものだ。30代後半で大人から始めるバレエにはまり、それ以来、読書というアイコンはバレエにとって代わった。そしてクルーズ旅行が年に一度のイベントになったときに、新たなアイコンを加えることができ、多趣味な自分に酔いしれるここ数年であった。

2020年夏、オリンピックの大移動前にと6月初旬に予定していた完璧かつ成熟した旅が、無残にも流れ、幸いかかる金銭的ダメージがなかったにせよ、素通りしようとしている短い夏を簡単にリセットできるほど、人間としての成熟度に欠けていた。

というわけで、9月末に東京のGo to キャンペーン参入目前に沖縄は瀬良垣のハイアットリージェンシーに滞在した。幻となったSeabournの旅を妄想しながら過ごした旅であった。

日本資本ONLYの国内系ホテルが頑張るもどこかにやぼったさが残ってしまうのに対し、豊富なノウハウと固定概念にしばられることのない自由な米国系のホテルの箱は非常によくできている。反面、残念ながら充実した人材教育の話となると別だ。日系ホテルの一糸乱れぬ徹底した教育の優秀さにはまだまだ届かない。

クルーズ船はどうだろう。これまで乗船してきたポナンのサービスは2019年は急成長による歪みの塊で不満が残ったが、全体的には大変よく教育されていると思う。客目線を大切に進化するキャビンと船内設備。常に要望に応えられるよう、洋上であってもあらゆるストックが準備万端である。クルーは乗船客の動きをよく見ているし、すぐに名前と顔を一致させる能力と頻繁に交わす会話からサービス向上のヒントを確実に体得しているように感じる。これは、きっとDiversityがなせる技だと思う。乗船客も世界中からくるのであれば、クルーの国籍も年齢もバックグラウンドもさまざまだ。良きものは吸収し、悪しき慣習は改める。どの業種も柔軟な進化なしにはもはや生き延びることは難しいであろう。

コロナ禍のポナンのインスタを訪れれば、フェイスシールド越しのサービスが展開されている。以前のような世界に戻ることができるのか、以前に近い状況になら戻れるのか、そしてそれはいつなのかはわからないが、クルーズ船の旅がこの困難な時期を経たがゆえに新たな進化を遂げられるよう祈ってやまない。

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