夜中の事件簿
今回は東地中海を巡る旅は、ギリシャだけでなくトルコの高級リゾート地、フィトヒエとボドルムの 二都市を予定していたが、直前になりフィトヒエの港湾当局により自船テンダーボートではなく、当局指定のボートを使用しなくてはならないとのお達しで、当局のボートの規模が小さく一回の乗船数が極めて少ない事、使用できる桟橋が非常に狭く車椅子が通るのに支障があるとの理由からマルマリスへ変更となった。クルーズ船には航路変更はつきものであるが、地図で見るとほぼ位置が変わらないため、既に募っていたエクスカーションにも支障はなく問題はないようだ。
マルマリスへ向かう夜、事件は起きた。夜中に部屋が煙たいのだ。まさか携帯から発火?と、部屋を調べてみるが何ともない。 廊下に出ると廊下も煙の臭いが充満していた。バルコニーはすさまじく煙の臭いがする。慌てて部屋と同じ階にあるヘルプデスクに駆け付けると、船からの煙ではなく外からの煙だと言う。寄港地マルマリス付近で山火事が起きたようで、風が強かったためあっという間に火が回ったようだ。昨年もトルコは地中海沿いで同様の火事に見舞われ、一週間以上火は燃え続け、数万ヘクタールにわたり壊滅的な被害を受けている。
バルコニーよりヘリコプターで消火活動が行われるのが見え、緊迫した状況であった。明け方であったため、アナウンス等は行われず、朝食時にキャプテンより、寄港地は安全なので予定変更はない旨説明があった。それにしても、相当部屋が煙たい。夜中に、ほかの乗客から問い合わせがパンクしなかったのだろうかと訝る。この度の被害は3000ヘクタール。放火の可能性も消えてはいないが、気候変動により熱波が起こりやすく乾燥した地域ではその対策が非常に重要となっている。燃料が高騰していることもあり消火活動に莫大な費用を擁すだけでなく、繊細な生態系の破壊による損失は莫大なものとなる。
その日マルマリスの町に出てみたが、煙の臭いを除けば何事もなかったような平常さを保っていた。しかしながら、世界規模で気候変動による弊害が起きている以上、クルーズ船を楽しむ私たち自身も相応の配慮や貢献をしていかなければならない。
コメントを投稿する
コメントを書く