黙祷を捧げる
40年も前のことと改めて認識するが、高校では世界史を選択していた。あの頃、世界史の勉強イコール大学受験のための選択科目でしかなかったが、地中海を巡るようになってから、遠い記憶を蘇らせつつ新たに学び続けている。
The Gallipoli Campaign 第一次世界大戦中、連合軍は同盟国側のオスマン帝国の首都イスタンブールを占領するため、エーゲ海からマルマラ海への入り口にあたるダーダネルス海峡の西側、ガリポリ半島に対して上陸作戦を行った。
600年以上の栄華を誇ったオスマン帝国も末期でありながら、予想外の激しい攻防が拡げられ、ムスタファ・ケマル・アタチュルクの活躍により連合軍側は撤退することとなる。
この作戦にはオーストラリア、ニュージーランドが遠方より遠征し連合軍に加わり、多くの戦死者、戦傷者を出した。ダーダネルス海峡を通り旅の終着地、イスタンブールへ向かう際、この船にオーストラリア、ニュージーランドからの乗船客が多くいたこともあり、乗客はグラスを片手にラウンジに集い黙祷を捧げた。
どこまでも続く青く美しい海、美しい花が咲き乱れ、丘の上の教会を中心に存在する小さな村にはつつましやかに生活する息吹が感じられ、海沿いの目抜き通りには夏の間中、観光客がひしめき合い、束の間のバカンスを楽しむ。
遺跡や要塞を巡るたびに、そこで繰り広げられた戦争の痕を見過ごすわけにはいかない。繰り返される闘いの歴史、権力の腐敗と暴走、人類が歩み続けた哀しい歴史と愉楽の境目は紙一重だ。
もう過去のことで終わってほしい。国も人種も宗教も超えた、人々の祈りが静かに捧げられた夕べだった。
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