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クルーズ船の廃棄物問題について考察する

2019年6月、世界最大のクルーズ客船の運営会社「カーニバル・コーポレーション」が、バハマ海にプラスチックごみなどを不法投棄していたことを認めたことで、世間を騒がせました。カーニバル傘下のクルーズ会社では、プラごみ以外にも、残飯や石油なども海洋投棄していたというから驚きです。こんな最低なことをこんな巨大企業が行っていたなんて、現代の出来事とは思えません。

海にゴミを捨てまくる「豪華クルーズ船」企業の呆れた実態

カーニバル・コーポレーション傘下のプリンセス・クルーズは不法投棄や環境破壊に対する罰金として、2000万ドルを支払うことに合意したということですが、「罰金払ったんで、はい、おしまい!」ということになっていないか気になったので調べてみました。

罰金2000万ドルを払ったプリンセスクルーズのWebページから

プリンセス・クルーズのページには、

プリンセス・クルーズにとっても海はとても大切です。弊社では、海洋環境の保全において、高い基準と責任意識をもった活動を続けています。私たちの事業と25,000人以上の社員の生活は、海があってこそ成り立っています。

という記載がありました。「海があってこそ成り立っている」のは前々からなのになんであんなことやったんだろう…というツッコミは置いておいて・・・

www.princesscruises.jp

彼らは、なんと2006年からISO14001環境管理システム基準を取得・維持していたらしいです。海洋投棄が行われていた時には既にISO14001を取得していたんですね。だとしたらISOの審査の際にも、環境に配慮した企業のサービスを購入しようと考えていた顧客に対しても大ウソをついていたことになります。。過ぎたことは今さら言及しても仕方ないですが…

プリンセス・クルーズでは、環境に対する社員教育や、責任体制の整理をしているようです。

他にも、排気、排水については、2020年までに新しい機械を導入するとのこと。

カーニバル・コーポレーションでは、所有船全般においてEGCSの研究開発プログラムに巨額の投資をしてきました。プリンセス船でも全面的にこのプログラムに取り組んでおり、2020年までには、14隻がEGCSを搭載する予定です。新規製造する船においては、EGCSは標準搭載の技術となります。

2020年までには、膜ろ過と紫外線を活用した、現代技術で可能な最高レベルの水処理システムを所有船の80%に整備する予定です。一部の雑排水は、汚水と合わせてより高度な汚水処理施設で処理することもありますが、船上に保存したまま出港してから、すべての法律・規制に準拠しつつ、海に放出しています。

こうしたWebページに記載がある内容ってどれくらいの強度でコミットされているんでしょうね。 今後は同じことは起きないような社内体制になっているといいんですが。

カーニバル・コーポレーション(英語)のWebページより

Waste Management - Carnival Sustainability

ページを開くと、デカデカと「West Managment(廃棄物管理)」と書かれています。内容を見てみます。

Waste Reduction
Continue to reduce waste generated by our shipboard operations by 5% by 2020 relative to our 2016 baseline, as measured by kilograms of non-recycled waste per person per day.

廃棄物削減
2016年のベースラインと比較して、2020年までに1日あたり1人あたりのリサイクルされない廃棄物のキログラム数で測定して、船上作業で発生する廃棄物を5%削減し続けます

2016年から廃棄物を5%削減し続けるとのこと。

Increase Advanced Waste Water Purification System (AWWPS) coverage of our fleetwide capacity by 10 percentage points by 2020 relative to our 2014 baseline.
We increased fleetwide capacity coverage of Advanced Waste Water Purification Systems (AWWPS) by 8.6 percentage points compared to our 2014 baseline.

2014年のベースラインと比較して、2020年までにフリートワイド容量の高度な廃水浄化システム(AWWPS)の適用範囲を10パーセントポイント増やします。
先進的廃水浄化システム(AWWPS)のフリート全体の処理能力を8.6パーセントポイント増やしました。

その上、排水浄化システムについても増やしていくということです。すべての排水が浄化されていたわけではなく、また今後も100%にしていくのは難しいということなのでしょうか。

REMOVING SINGLE-USE PLASTICS
In 2018, we started an initiative to evaluate our collective use of single-use plastic items and alternative options available in the market. As part of this initiative, we have identified items we can replace with reusable non-plastic alternatives or biodegradable options available for straws, take away cups and other items. Our goal is to remove single-use plastics within our operations whenever feasible.

FOOD DISCHARGE AT SEA
We continually evaluate technologies and operations to minimize the volumes of food discharges at sea.

In 2018, one of our brands continued to optimize a pilot program that uses equipment to digest food waste prior to discharge at sea. Based on the positive results of the pilot program the equipment will be installed in additional ships starting in 2019.
In 2017, one of our brands completed an assessment to promote a more sustainable shipboard food procurement, preparation, consumption and disposal method. In 2018, the food surplus component of the program was expanded and eight ports received food donations. This program reduces the volume of food waste generated.

使い捨てプラスチックの除外
2018年、私たちは市場で入手可能な使い捨てプラスチックアイテムと代替オプションの共同使用を開始しました。この一環として、再利用可能な非プラスチック製の代替品、またはストロー、持ち帰り用カップなどの生分解性のものに置き換えることができるアイテムを特定しました。私たちの目標は、可能な限り、事業内の使い捨てプラスチックを取り除くことです。

海での食品の放出
私たちは、海での食品排出量を最小限に抑えるための技術と運用を継続的に評価しています。

2018年、当社のブランドの1つは、機器を使用して海上で排出する前に食品廃棄物を消化するパイロットプログラムを最適化し続けました。パイロットプログラムの肯定的な結果に基づいて、機器は2019年から追加の船に設置されます。
2017年、当社のブランドの1つは、船上でより持続可能な食料調達、準備、消費、廃棄方法を促進するための評価を完了しました。 2018年には、プログラムの食料余剰部分が拡大され、8つの港が食料の寄付を受けました。このプログラムは、発生する食品廃棄物の量を減らします。

廃プラスチックを減少させるために、使い捨てプラスチックの使用を辞めたり、食料調達方法を変更するとのこと。うーん、こんなフワっとした内容しか掲載しないものなのだろうか。

そして、取ってつけたようにSDGsのロゴの12番(リサイクルしよう)と6番(安全な水とトイレ)が掲載されています。

SDGsとは、Sustainable Development Goalsの略で、国連でエラい人達が寄ってたかって決めた世界の開発目標のことらしいです。17個のゴールから構成されていて、それぞれ海や陸やゴミなどいろいろな課題について解決するためのゴールを定めています。

海に携わる事業者なんだから14(海の豊かさを守ろう)とか、大企業なんだから7(クリーンエネルギー)とかもやれるんじゃないの、という気も。本気度としてはどうなんでしょう。

SDGsについてはこちらのページをどうぞ。

持続可能な開発目標

本当にわいが知りたかったこと

この事件の前、カーニバルコーポレーション社のクルーズ船での廃棄物管理はどうなっていたんでしょうか。どの程度の杜撰さで、会社としてどんな対策が不足していたのでしょうか。業界最大手の会社が継続して行っていた悪事がばれたんですから、もう少し抜本的で踏み込んだ対策が行われていると思っていましたが、現実はそうはいかないですね。地味でも自らに課したゴールを着実に実行してほしいものです。

せっかくの楽しいクルーズ旅行。楽しい裏側でみんなの資源を壊している、なんていうのは残念です。「クルーズ会社の海洋投棄」というニュースにがっかりしているのは、エコ団体だけではないということに、クルーズ会社が気付いてくれるといいですね。

また、最新技術で我々の●などの汚水や廃棄物が100%無害化されていると思っていましたが、クルーズ船ではまだそれが行われていないようです。日本の企業が持つ色々な廃棄物処理の技術がこういうところで使われたら面白いかもしれないなーと思いました。

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