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船の本 「進化する船」

シリーズ  書庫:船の本

4連発目です。

今日はポジティブなコメントが書ける本です...(^^!

「進化する船 シップ・オブ・ザ・イヤー 15年の記録」
編集:(社)日本船舶海洋工学会
発行:海事プレス
ISBN4-905781-31-0
定価:1200円(税込み)

シップオブザイヤーをご存知の方も多いと思いますが、この賞は、旧日本造船学会
(現 日本船舶海洋工学会)が、技術的、芸術的(?)に優れた船の建造を促進し、広く
一般に海事思想の普及を図る為に、平成3年に制定した作品賞で、その前年に建造さ
れた船の中から、選考委員会によって選ばれる賞です。

昨年はどの船が選ばれたか記憶に新しいところですが、皆さんはすぐに思い浮かび
ますか?

ちなみに過去15年間の受賞船はというと...

Ship Of The Year'04 受賞船 はまなす ● 船種 : 大型単胴高速長距離フェリー ● 発注者 : 新日本海フェリー(株) ● 建造所 : 三菱重工株式会社 長崎造船所 Ship Of The Year'03 受賞船 COURAGEOUS ACE ● 船種 : 自動車/トラック運搬船 ● 所有者 : COURAGE SHIPHOLDING S.A. ● 設計・建造所 : 南日本造船株式会社 Ship Of The Year'02 受賞船 TEMPERA ● 船種 : Crude oil and oil product carrier ● 所有者 : FORTUM OIL AND GAS OY ● 設計・建造所 : 住友重機械工業株式会社 Ship Of The Year'01 受賞船 KOHYOHSAN ● 船種 : 撤積貨物船 ● 所有者 : ERICA NAVIGATION S.A. ● 設計・建造所 : 日本鋼管株式会社(津製作所) Ship Of The Year'00 受賞船 泉翔 ● 船種 : RORO貨物船 ● 発注者 : 岡本汽船(株)運輸施設整備事業団 ● 建造所 : 山中造船(株) Ship Of The Year'99 受賞船 さんふらわあとまこまい・ほっかいどう丸 ● 船種 : 高速貨物フェリー ● 発注者 : 「さんふらわあ とまこまい」 : 運輸省施設整備事業団/ (株)ブルーハイウエイライン 「ほっかいどう丸」 : 川崎近海汽船(株) ● 建造所 : 三菱重工業株式会社 Ship Of The Year'98 受賞船 昭洋 ● 船種 : 大形測量船 ● 発注者 : 海上保安庁 ● 建造所 : 三井造船(株) Ship Of The Year'97 受賞船 ゆにこん ● 船種 : 高速カーフェリー ● 発注者 : 東日本フェリー(株) ● 建造所 : 三菱重工業(株) Ship Of The Year'96 受賞船 すずらん・すいせん ● 船種 : 大型単胴高速長距離フェリー ● 発注者 : 新日本海フェリー(株) ● 建造所 : 石川島播磨工業(株) Ship Of The Year'95受賞船 飛翔 ● 船種 : 新形式超高速船テクノスーパーライナー 空気圧力式複合支持船形・実海域実験船 ● 発注者 : テクノスーパーライナー技術研究組合 ● 建造所 : 三井造船(株)および三菱重工(株) Ship Of The Year'94 受賞船 はやぶさ ● 船種 : 高速カーフェリー ● 発注者 : 船舶整備公団および(株)九四フェリーボート ● 建造所 : 川崎重工業(株) Ship Of The Year'93 受賞船 POLAR EAGLE ● 船種 : SPB方式LNG船 ● 発注者 : PHILLIPS ALASKA NATURAL GAS CORPORATION, MARATHON OIL COMPANY ● 建造所 : 石川島播磨工業(株) Ship Of The Year'92 受賞船 とらいでんと ● 船種 : 定期高速旅客船(SSTH) ● 発注者 : 深日海運(株) ● 建造所 : 石川島播磨工業(株) (株)アイ・エイチ・アイ・アムテック Ship Of The Year'91 受賞船 日産むさし丸 ● 船種 : ロールオン・ロールオフ貨物船 ● 発注者 : 九州急行フェリー(株) ● 建造所 : 内海造船(株)瀬戸田工場 Ship Of The Year'90 受賞船 クリスタル・ハーモニー ● 船種 : 客船 ● 発注者 : 日本郵船(株) ● 建造所 : 三菱重工業(株)長崎造船所

参照URL:http://www.east.jasnaoe.or.jp/snaj/ship/index.html

となっています。
この本は、この15年間の賞の軌跡を記したもので、各年度の受賞船の受賞理由
等がまとめられています。その時々の時代背景などもうかがえて、このコメント
を読むだけでも価値があります。

特に珠玉なのが、本書の冒頭に載せられている学会会長の大阪大学 内藤教授の
挨拶文です。

船、海洋、優しい社会 船が陸から離れて走る姿は、今住んでいる社会と違った社会空間が陸から離れて存在することを想起させてくれる。船に乗り込めば、そのちょっと違った空間に入る事ができることに心を惹かれる。これが船の魅力の1つである。現実の生活の中に身をおけばマンネリ化した日常世界より別の世界は、外から見て美しくあればあるほど、魅力的である。この空問が、客船であれ、貨物船であれ、日常と違った世界とを繋ぐ架け橋になっていることが船の魅力を引き立たせる。 船の形が船首、船尾で閉じ、細長体で、船橋などの配置がされた総合的な姿が美しいと思うことは、船に興味がない人には理解できないかもしれない。即ち、船の魅力を語る人は、船に関する「思い込み」を語っているのである。それは「あばたも笑窪」であり「惚れた者の想い」なのである。一般的に言って「好き嫌い」や「美しい醜い」などは、そのように感じる人の「思い込み」なのである。 専門家は、目に見える形で船舶に集積された技術だけでなく、表から直接的に見えない、隠れている何かも感じ、それらを1つの美しさとして評価する。その評価の高さは、注がれた技術開発の永い道程をそれなりに理解し、それを商品化させることの難しさを知っているから、その努力の量と難易度に比例している。まさに知と汗の集積体としての美しさを感じ取って評価する。この時、技術の具体性がなければ....この部分に新しい技術が、このように使われたなど...技術者はその美しさを十分に感じる事はできない。それ故、造船技術の成果として造られた高性能な船は、専門家から見るとやはり美しい。高性能な船の周りを流れる空気や水は、目に直接的には見えないが綺麗に流れていると十分想像できる。どのように流れるのが美しいかは、これもまた「思い込み」である。技術者が持つこの深い「思い込み」が普遍的な造船技術の集積体としての美しさを生むのである。 国際クルーズ船市場に参入した船、燃費改善による環境負荷低減が図られた船、狭い港湾内で優れた操船性能を有した船、最大速力32.26ノットという高速で航行する船、電気推進を導入した船、「環境に優しく、人にも優しい乗り物を創る」を開発方針として造られた船。航送波を小さくし、バリアフリー対応トイレなどの船内施設を有する船、波の中で良い性能を発揮する船首形状を変えた船、風圧抵抗を軽減した船、実に多様な優秀な船が造られている。 さて、四面を海で囲まれた日本が、海と同じように包容力を有する海洋国家として成長してゆくためには、船を単なる物を運ぶだけの船として捉えるのではなく、人や物を運ぶ事によって文化や文明の交流、創設にも係ってきた船として、深く広く捉える事が重要である。古代から日本民族が造り出してきた多くの船は、このような役割をも長年果たしてきた。実はここに日本の大きな特徴があるはずである。 この本にまとめられた受賞船は、歴史にその名を刻まれたが、各船とも優れた、固有の特徴を有した素晴らしい船である。また、これらの技術的到達点は、これからも多くの技術的革新が、造船工学の分野にも生まれるのではないかと大きな期待を抱かせるものだ。 総合工学の賜物である船舶は、「ものづくり」の原点であり、設計から建造まで実に多くの技術者の知恵と努力が集積されたものである。船を造る人達に誇りと希望を与えるとともに、国民の知的な面を、船舶、海洋の側面から一層豊かにする小さな貢献を、この本がするのではないだろうか。 船に対して深い見識をお持ちの柳原良平氏をはじめとした選考委員の方々が、賞の選考に力を尽くされている事は、文化の香りを一層引き立たせるものである。日本は海洋文化を豊かに取り込む事により豊潤な優しい社会を再生する事になるのではないだろうか。

いいでしょう?
こういう熱い方がメディアの方にも多数存在していれば、日本のクルーズも随分変わる
と思っているのですが...

60ページほどの薄い本なので、1200円は高いと思われるかもしれません。
でも価値は充分にある本だと思っています。

アノニマ

はじめまして。船という乗り物は、時間を消費して道中を楽しむ乗り物ですね…。北海道にも、ただ行くだけなら飛行機ですが、いつか時間の余裕が出来たら、フェリーで行ってみたいものだと思っています。

コメントありがとうございます。「道中を楽しむ」、まさに!!です。飛行機や鉄道と一番違うのは、座席に縛られることなく、航行中に船内を歩き回れることだと思っています。(まぁ鉄道もある程度は歩けますが...パブリックスペースの広さが違いますから。) 空や陸の眺めとは一味違う海からの眺めっていうのもポイント高いですよね。北海道へのフェリー旅。関東の海無し県在住者にとっては、なかなか難しいです。大洗へ行くか新潟へ抜けるか。どちらへ行くのも時間が変わらなかったりします...(^^;)

こたけ

商船から海保まで網羅されていますね。テクノスーパーライナーがあるのがなんとなく切ないですよ。いくら優れていても、受け入れられない事情には勝ち得ない!う〜ん。この本、見つけたら手に取ってみますね。

一般の書店だと、なかなか置いていないかもしれませんが、見かける事がありましたら是非手にとってみて下さい。本のあまりの薄さにはビックリするとは思いますが、中味はなかなかですよ。

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