今の時代、クルーズでフォーマルと言う表現をどう捉えるかは、難しくなっていると思います。その昔、日本で一般に言う男性のブラック・ジャケットは略礼服で、正式にはフォーマルではない、フォーマルだとタキシードが必要、と教えられてバーゲンでタキシードを購入......
今の時代、クルーズでフォーマルと言う表現をどう捉えるかは、難しくなっていると思います。
その昔、日本で一般に言う男性のブラック・ジャケットは略礼服で、正式にはフォーマルではない、フォーマルだとタキシードが必要、と教えられてバーゲンでタキシードを購入しました。
キュナード自体も近年は明らかにフォーマル度が下がっていると思います。
2005年に初めてワールド・クルーズの区間乗船でQE2に乗った際には、8割以上の男性がタキシードやディナー・ジャケット、女性はロング・ドレスと言う印象で、タータンチェックの民族衣装のフォーマルを着た方も居ました。2008年にサウサンプトン発着のショートクルーズに乗船した際も、同じような感じだったと記憶しています。
その後、2009年にニューヨーク発着でQM2に乗船した際は、少しカジュアル風な感じではあるものの若い人もドレスアップしていると感じました。アメリカでは、高校や大学の卒業パーティーに出るために、ドレスやジャケットなどの衣装を作り、持っている人が多いのでクルーズはこの衣装が活躍するのだそうです。
その後、2018年に念願のQEのワールド・クルーズの区間乗船で大阪発着に乗船した際は、明らかにフォーマル度は低下していました。
正直、あれっ?って言う感じでした。飛鳥IIと同じか、負けてるかもしれません。
航行する地域や季節によっても異なると思いますが、その要因の一つとして、旅行会社が独自に作るパンフレットや乗船案内などで、特別にフォーマルな衣装を揃える必要はなく、ダーク・スーツでも構わない、と説明していることも背景にはあると思います(大手旅行会社の説明会で実際にそのように話していました)。
キュナードはかつて英国の上流社会で行われていたサービスを船内で提供することをテーマとしています。そのテーマを自分自身が楽しむための衣装が、フォーマルなのだと思っています。
日本でフォーマルな装いの場として最もポピュラーなのが、結婚式や披露宴です。男性は殆ど略礼服で、変化はネクタイや蝶タイ、ポケットチーフによるものです。女性は新婦よりも目立たない範囲でのドレスアップとなります。言わば他人のためのフォーマルです。
ところが、クルーズは自分自身が非日常の空間と時間を楽しむ、自分のためのフォーマルです。キュナードはその場を提供してくれています。例えば、テレビドラマのダウントン・アビーは20世紀初頭の英国貴族社会がモデルです。タイタニックの事故からも年数が経っておらず、キュナードがタイタニックから継承するホワイト・スター・サービスはまさにこのドラマの世界観なのではないでしょうか。
ディナーの前にフォーマルに着替えるシーンがドラマでも出てきますが、船内の生活と同じです。我が家の場合、グリル・クラスではないためにバトラーはいませんが、着替えてキャビンを出れば気持ちは同じです。
日本人の特徴として、横並びと言う意識があります。他人がどんな格好をするかは気になります。ですが、本来はフォーマルな時間と空間を用意しているキュナードのテーマを、自分自身が楽しむための衣装を準備すれば良いと思います。