MSCクルーズのゴッドマザー完全ガイド|全客船の命名式

1. そもそも「ゴッドマザー」とは?クルーズ船の命名式の伝統
クルーズ船のゴッドマザーとは、新造船の「名付け親」として命名式に立ち会い、船の幸運と安全を祈る女性のことです。英語圏では「Godmother」と呼ばれ、航海の守護者としての意味が込められています。
この伝統は古代にまで遡ります。船の進水式では神々に安全な航海を祈る儀式がおこなわれており、やがてワインやシャンパンのボトルを船体に当てて割るセレモニーへと発展しました。女性がゴッドマザーを務める慣習は、聖母マリアや海の守護聖人への信仰が背景にあるとされています。
1-1. 命名式の一般的な流れ
クルーズ船の命名式(Naming Ceremony)は、新造船が就航する際に一度だけおこなわれる特別なセレモニーです。一般的には以下のような流れで進みます。
- ゲストの入場・式典の開始 — 招待客や乗客が集まり、華やかな雰囲気のなかで式がスタートします
- ゴッドマザーによる命名スピーチ — 船名を正式に宣言し、船と乗客の安全を祈る言葉を述べます
- シャンパンボトルのセレモニー — リボンをカットし、シャンパンの瓶を船体に当てて割ります。瓶が見事に割れると「幸運の船」とされる縁起担ぎです
- 祝賀パーティー — 花火やライブパフォーマンスなど、各クルーズラインが趣向を凝らした祝宴がおこなわれます


ゴッドマザーに選ばれるのは、クルーズ業界ではセレブリティや王族、社会貢献者など著名な方が多く、船会社のブランドイメージを象徴する人物が指名されます。ロイヤル・カリビアンがスポーツ選手を、セレブリティクルーズが女性活動家を選ぶなど、各社の個性が反映される興味深い文化です。
2. MSCクルーズとソフィア・ローレン|特別な関係の理由
MSCクルーズにおけるゴッドマザーの話をするうえで欠かせないのが、イタリアの大女優ソフィア・ローレンの存在です。彼女はMSCクルーズの大半の客船のゴッドマザーを務めており、同一人物がこれほど多くの客船の名付け親となっているケースはクルーズ業界全体を見渡しても極めて異例のことです。

2-1. なぜソフィア・ローレンが選ばれ続けるのか
その理由は、MSCクルーズのルーツにあります。MSCクルーズはイタリア・ナポリ発祥の企業で、親会社MSC(Mediterranean Shipping Company)は世界有数のコンテナ船会社です。一方のソフィア・ローレンもナポリ近郊の出身。「スクリーンの伝説」と称されるイタリアで最も有名な女優の一人であり、1934年生まれの彼女は長年にわたり世界中のファンを魅了し続けています。
MSCクルーズにとって、ソフィア・ローレンは単なるセレブリティではなく、イタリアの誇りとブランドアイデンティティの象徴。ナポリという共通のルーツを持つ彼女を繰り返しゴッドマザーに迎えることで、「イタリアのエレガンスと情熱」というブランドメッセージを体現しているのです。
2-2. パートナーシップの歩み
ソフィア・ローレンがMSCクルーズのゴッドマザーを初めて務めたのは、2003年就航のMSCリリカの命名式でした。以来約20年にわたり、MSCクルーズの新造船の大半で彼女が命名式に登場するという特別な関係が続いています。2022年のMSCワールド・エウローパと2025年のMSCワールド・アメリカではそれぞれ異なるゴッドマザーが選ばれましたが、それでもMSCクルーズの大半の客船を担当してきたという圧倒的な実績に変わりはありません。


MSCクルーズのアポンテ会長一族とローレンの間には深い信頼関係があり、新造船の就航は彼女の存在なくして語れないといっても過言ではありません。
3. MSCクルーズ全客船のゴッドマザー一覧
ここからが本記事の核となるセクションです。MSCクルーズの全客船について、ゴッドマザーと命名式の情報をまとめました。
MSCクルーズの客船は大きく以下のクラス(シリーズ)に分類されます。
- リリカクラス — 約65,000トン級のコンパクトな船。MSC初期の客船群
- ムジカクラス — 約90,000トン級。リリカクラスの拡大版
- ファンタジアクラス — 約130,000トン級。MSCの大型船時代の幕開け
- メラビリアクラス / メラビリア・プラスクラス — 約170,000トン級。船内にプロムナード(屋内遊歩道)を備えた人気シリーズ
- シーサイドクラス / シーサイドEVOクラス — 海との一体感を重視したデザインが特徴
- ワールドクラス — MSC最新・最大の客船。LNG燃料対応の次世代型
3-1. 全客船ゴッドマザー一覧表
以下のテーブルで、★印はソフィア・ローレンがゴッドマザーを務めた船です。
| 船名 | 就航年 | クラス | ゴッドマザー | 命名式開催地 |
|---|---|---|---|---|
| MSCリリカ | 2003 | リリカ | ★ ソフィア・ローレン | ナポリ |
| MSCオペラ | 2004 | リリカ | ★ ソフィア・ローレン | ヴェネツィア |
| MSCアルモニア | 2004(※) | リリカ | ★ ソフィア・ローレン | ※確認中 |
| MSCシンフォニア | 2005(※) | リリカ | ★ ソフィア・ローレン | ※確認中 |
| MSCムジカ | 2006 | ムジカ | ★ ソフィア・ローレン | ヴェネツィア |
| MSCオーケストラ | 2007 | ムジカ | ★ ソフィア・ローレン | チヴィタヴェッキア |
| MSCポエジア | 2008 | ムジカ | ★ ソフィア・ローレン | ジェノヴァ |
| MSCマニフィカ | 2010 | ムジカ | ★ ソフィア・ローレン | ハンブルク |
| MSCファンタジア | 2008 | ファンタジア | ★ ソフィア・ローレン | ナポリ |
| MSCスプレンディダ | 2009 | ファンタジア | ★ ソフィア・ローレン | バルセロナ |
| MSCディヴィーナ | 2012 | ファンタジア | ★ ソフィア・ローレン | マルセイユ |
| MSCプレチオーサ | 2013 | ファンタジア | ★ ソフィア・ローレン | ジェノヴァ |
| MSCメラビリア | 2017 | メラビリア | ★ ソフィア・ローレン | ル・アーヴル |
| MSCベリッシマ | 2019 | メラビリア | ★ ソフィア・ローレン | サウサンプトン |
| MSCシーサイド | 2017 | シーサイド | ★ ソフィア・ローレン | マイアミ |
| MSCシービュー | 2018 | シーサイド | ★ ソフィア・ローレン | ジェノヴァ |
| MSCグランディオーサ | 2019 | メラビリア・プラス | ★ ソフィア・ローレン | ハンブルク |
| MSCヴィルトゥオーザ | 2021 | メラビリア・プラス | ★ ソフィア・ローレン | ドバイ |
| MSCシーショア | 2021 | シーサイドEVO | ★ ソフィア・ローレン | マイアミ(オーシャンキー) |
| MSCシースケープ | 2022 | シーサイドEVO | ★ ソフィア・ローレン | ニューヨーク |
| MSCエウリビア | 2023 | メラビリア・プラス | ★ ソフィア・ローレン | コペンハーゲン |
| MSCワールド・エウローパ | 2022 | ワールド | シェイカ・ヒンド・ビント・ハマド・アル・ターニー | ドーハ |
| MSCワールド・アメリカ | 2025 | ワールド | ドリュー・バリモア | マイアミ |
※MSCアルモニアとMSCシンフォニアは元々他社(フェスティバルクルーズ等)から引き継いだ船で、MSCとしての就航年は再編入時期を記載しています。この2隻のMSCとしての命名式の詳細は公開資料が限られているため、開催地を「※確認中」としています。

ご覧のとおり、MSCクルーズの大半の客船でソフィア・ローレンがゴッドマザーを務めています。近年のワールドクラス2隻では、MSCワールド・エウローパのゴッドマザーにカタール財団CEOのシェイカ・ヒンド・ビント・ハマド・アル・ターニー、MSCワールド・アメリカのゴッドマザーにアメリカの女優ドリュー・バリモアが選ばれました。それぞれ中東市場・北米市場への本格進出を象徴する人選といえるでしょう。
Cruisemansに寄せられた口コミでは、MSCベリッシマが252件と最も多くの乗船レビューが集まっており、日本発着クルーズでの人気の高さがうかがえます。
4. 印象的な命名式エピソード5選
テーブルだけでは伝わらない、話題になった命名式のストーリーを5つご紹介します。
1. MSCディヴィーナ(2012年・マルセイユ)— ソフィア・ローレンへの最大級のオマージュ
「ディヴィーナ(Divina)」はイタリア語で「神聖な、至高の」という意味。船名自体がソフィア・ローレンへの敬意を込めて名付けられたとされています。マルセイユでの命名式は地中海の陽光のもと華やかにおこなわれ、船内にはローレンを讃える「ソフィア・ローレン・ルーム」という特別な客室まで設けられました。


2. MSCベリッシマ(2019年・サウサンプトン)— 豪華エンターテインメントの競演
MSCベリッシマの命名式はイギリス・サウサンプトンで開催され、大規模なエンターテインメントショーが話題となりました。「ベリッシマ(Bellissima)」は「とても美しい」の意味。命名式では華やかなパフォーマンスが披露され、MSCの新世代メラビリアクラスの船出を祝いました。日本発着クルーズで運航実績があり、日本のクルーズファンにとって最も馴染み深いMSC船のひとつです。
3. MSCワールド・エウローパ(2022年・ドーハ)— 中東初のMSC命名式
FIFAワールドカップ・カタール大会の開催に合わせ、MSCワールドクラスの第1船の命名式がカタール・ドーハで挙行されました。ゴッドマザーはカタール財団CEOのシェイカ・ヒンド・ビント・ハマド・アル・ターニーが務め、ソフィア・ローレン以外がゴッドマザーとなった初の船となりました。ヨーロッパ以外でMSCの命名式がおこなわれるのも異例のことで、中東市場への本格進出を象徴するイベントでした。LNG燃料に対応した次世代型の船として、環境面でも注目を集めた一隻です。
4. MSCシーショア(2021年・オーシャンキー)— プライベートアイランドでの祝宴
MSCシーショアの命名式は、MSCクルーズのプライベートアイランド「オーシャンキー」とマイアミの両方で開催されました。新型コロナウイルスの影響で休止していたオーシャンキーの正式な再オープンも兼ねた特別な式典で、夜通しガラ・パーティーがおこなわれました。



5. MSCグランディオーサ(2019年・ハンブルク)— メラビリア・プラスクラスの船出
メラビリア・プラスクラスの第1船として登場したMSCグランディオーサの命名式はドイツ・ハンブルクで開催。ソフィア・ローレンがリボンカットをおこない、シャンパンが船体に打ちつけられる瞬間は大きな歓声に包まれました。

メラビリア・プラスクラスの詳細については、こちらの記事もあわせてどうぞ。
5. ゴッドマザーを知るとMSCクルーズがもっと楽しくなる
ゴッドマザーの知識は、実際に乗船する際にも船旅を深く味わうヒントになります。
5-1. 船内に残るゴッドマザーの痕跡
MSCディヴィーナの船内には、前述の「ソフィア・ローレン・ルーム」をはじめ、ローレンの映画キャリアにちなんだ写真や装飾が随所に施されています。船内を歩くだけで、イタリア映画の黄金時代に思いを馳せることができます。

また、MSCクルーズの船内にはアンディ・ウォーホルの作品が展示されているなど、アートやカルチャーへのこだわりが随所に感じられます。ゴッドマザーの背景を知っていると、こうした船内の発見がぐっと増えますよ。
5-2. 命名式前後の特別な体験
新造船の処女航海(Maiden Voyage=最初の営業航海)に乗船すると、命名式前後のお祝いムードを体感できることがあります。特別なイベントや記念品が用意されることもあり、その船の歴史の始まりに立ち会える貴重な機会です。
5-3. こんな方におすすめの船
- イタリア文化やソフィア・ローレンに興味がある方 → MSCディヴィーナ(船内にローレン関連の装飾が充実)
- 最新の船に乗ってみたい方 → MSCワールド・アメリカやMSCワールド・エウローパ(ワールドクラスの最新設備)
- 女子旅で気分が上がる体験をしたい方 → MSCベリッシマ(日本発着実績が豊富で口コミも充実)
- ラグジュアリーな体験を求める方 → MSCクルーズの姉妹ブランド「エクスプローラー・ジャーニー」も要チェック
MSCクルーズは船ごと・航路ごとに料金帯が大きく異なります。気になる船があれば、Cruisemansで最新の料金や口コミをチェックしてみてください。

6. まとめ
MSCクルーズは、ゴッドマザー文化をブランドの核として大切にし続けているクルーズラインです。今回の記事のポイントを振り返ります。
- ゴッドマザーとは、クルーズ船の命名式で船の幸運と安全を祈る「名付け親」のこと
- ソフィア・ローレンがMSCクルーズの大半の客船のゴッドマザーを務めており、同一人物による担当隻数はクルーズ業界で突出している
- MSCクルーズとローレンの絆の背景には、ナポリという共通のルーツとイタリアの誇りがある
- 命名式は世界各地で華やかに開催され、それぞれに印象的なエピソードがある
- ゴッドマザーの知識があると、船内の装飾やアート、船名の由来など、乗船中の発見が増える
MSCクルーズは今後も新造船の建造を進めており、命名式の話題はまだまだ続きそうです。次にMSCの船に乗るときは、「この船のゴッドマザーはソフィア・ローレンなんだ」と思い出しながら船内を歩いてみてください。きっと、いつもとは違った視点でクルーズを楽しめるはずです。
Cruisemansでは、MSCクルーズ全客船の口コミや料金情報を掲載しています。気になる船があれば、ぜひ乗船者のリアルな声をチェックしてみてくださいね。




