先月開催された『2018クルーズ・ポートセミナー』に参加しました。港湾関係者、船会社、メディア関係者などクルーズに関係する方、専門家の方のお話やディスカッションなど興味深いお話を聞くことができましたので一部記事に載せたいと思います。
クルーズポートセミナーとは
”みなと総合研究財団及びクルーズポート・マスター制度運営委員会は、港湾管理者や地方自治体・振興団体関係者、その他クルーズ業務に携わる関係者が、クルーズ船寄港に対応した港湾の在り方やクルーズ船誘致等のクルーズに関する知識や最新のクルーズ事情などの総合的な知見を短期間に取得することを目的としている。”
(引用:一般財団法人みなと総合研究財団webより)
クルーズ船の受け入れ側、港湾、地方自治体関係の方が集い新しいクルーズ情報や受け入れの取り組み、課題ほか情報共有をするセミナーです。今年の開催で6回目になったということでした。
一般財団法人みなと総合研究財団とは
”長年蓄積してきた経験やノウハウ、産学官にわたる多様な人的ネットワークを大切な財産として活かし、港湾や空港などみなとに求められるテーマについて幅広く調査研究を行います。また、これまで培ってきたスキルや強みを育て磨き、創意と熱意を持って調査研究に努めます。(中略)みなとを中心とした多様な活動主体を支援するとともに、得られた成果や情報を広く社会に発信していきます。”(引用:上記同)
クルーズ・ポートセミナーに参加した理由
何度かのクルーズ旅行を繰り返すうちに下船する『港』にも興味が出てきていました。乗船客側の勝手な考えで、下船する港が「こうだったらいいな」という思いもある中でクルーズ船の受け入れ側である「港側」はどういう活動やご苦労があるのかも知りたくなり場違いかとは思いましたが今回参加させて頂くことになりました。
また、今回出席した本セミナーの内容を当ブログの記事にすることは事前に主催の方より得ております。
日本のクルーズ人口と訪日クルーズ旅客利用者数の伸び
日本の『クルーズ元年』と言われる『平成元年』以降一時期の増減もあったようですが約20年もの間、クルーズ人口は年間20万人の横ばい状態でした。2016年に約25万人近くになり、2017年度には過去最高の約31万人を突破しました。
また、訪日クルーズ旅客利用者は2013年約17万人、2014年約42万人、2015年約111.6万人、2016年約199万人、2017年約253万人となっておりどちらも右肩上がりとなっています。政府は2020年までに500万人を目標としていることは度々ニュースでも報じらています。
クルーズ利用客の主な増加原因
・外国籍クルーズ船が日本周遊クルーズを行うようになった
→アジア市場の開拓によるクルーズの乗船機会が増加
→カジュアル船の増加し乗船機会が増加
・ビザ発給の緩和
→中国をはじめアジア地域、それ以外の他国より訪日増加に伴い、海外発着クルーズで寄港や日本へのフライ&クルーズ利用客増加
・ビジット・ジャパン・キャンペーン
→2003年小泉内閣時にキャンペーン実施本部の設置・活動
アメリカでのクルーズ人口は人口の約3%に達し、すでに頭打ち・飽和状態となっており外国クルーズ船は次の市場を開拓、アジア市場にも力を入れています。ちなみに日本人のクルーズ人口は日本の人口の約0.2%ということです。日本も含めアジア全体のクルーズ人口は10年前の約3倍に増加しています。
クルーズ船の現在の受け入れの現状・問題点
上記のように外国クルーズ船数、日本のクルーズ人口、訪日クルーズ利用客数が伸びていおり、現在受け入れをお断りしている港も多いのが現状で大変もったいない気もします。受け入れの問題点、これからの課題は以下のことが挙げられるようです。
クルーズ船の受け入れの課題と対策
1.大型クルーズ船の岸壁不足
→既存(貨物)岸壁の活用をし防舷材、係船柱の整備
→ドルフィン桟橋などによる岸壁の延長
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貨物船全長157mとクルーズ船全長348m満載*喫水は8.8mと同じ。
貨物船岸壁はクルーズ船にも流用が可能ですが、長さが足りないので岸壁延長にドルフィン桟橋で対応する対策を取っている港もあり大型クルーズ船受け入れ態勢を取っています。
また、貨物船に比べクルーズ船は軽いので防舷材や係留柱を増やして安全に停泊できるような対策も取られています。
*喫水=船体の一番下から水面までの垂直距離
*ドルフィン桟橋=港湾内水域に杭などを打ちこみ作る係留
2.エアドラフト問題(橋下をくぐれるか)
→横浜港、東京港ともに新しい港を現在建設中
関連記事(1):横浜新港地区客船ターミナル(仮)見学|Yokohama Pier9|ヨコハマハンマーヘッドプロジェクト
関連記事(2):東京国際クルーズターミナル建設予定地を見学-3|開業日決定&スペクトラム・オブ・ザ・シーズが第1船に
3.下船後の受け入れ体制
→CIQ(入国・税関・検疫)のスムーズなオペレーション
現状船内でCIQを行う場合が多く下船に時間がかかっており、寄港地時での時間が短縮傾向にある。港でのCIQの場所確保やオペレーションが今後の課題となっているようです。
→港から最寄駅、観光地へのシャトルバス台数の確保
クルーズ船の大きさによって下船する乗船客数が違い、また定期に寄港するということでもないのでバスの台数確保にどの港も悩まれているようでした。
→地元の方の協力の呼びかけ
大勢のクルーズ乗船客を受け入れてもらうには地元の方々の了解と協力が何より必要だということ。まずそれがないと港はあってもクルーズ船に寄港誘致ができないことを始めて知りました。
クルーズ船が寄港することで地元経済のみならず様々に活性化するような仕組み、動線などが考えられているようです。
寄港先での受け入れる側の色々な取り組みを恥ずかしながらこのセミナーに参加して初めて知りました。クルーズ乗船者、港湾関係そしてクルーズ船会社それぞれが『いいカタチ』になるにはまだ模索と実行が続くのではないでしょうか。
(2)へ続きます。
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