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帝国郵船客船・弥勒丸

15日は終戦記念日。

この戦争では数多くの日本商船が海の藻屑と消えてしまいましたが、中には沈められるはずのない船が2000人以上の民間人を乗せたまま犠牲になると言う痛ましい事件も起きました。

そんな船を題材にした小説に浅田次郎の「シェエラザード」があります。

大戦末期、連合国捕虜のための救援物資を運ぶ「緑十字船」という敵側に決して攻撃されないはずの病院船に近い存在でありながら、台湾沖で米潜水艦に沈められた阿波丸(11249トン、1943年建造、日本郵船)を題材にしたもので、小説では「弥勒丸」(みろくまる)と呼ばれています。

この架空の大型外航客船弥勒丸、小説では帝国郵船というやはり架空の船舶会社の客船で、17000トン(本では排水量となっていますが、おそらく総トン数の間違いでしょう)。

1941年に建造されて日本〜サンフランシスコ航路に就航する予定でありながら完成直後に軍に徴用されて緑十字船に改造されたと言う設定です。

絵はそんな弥勒丸の客船としての完成直後の姿を、2年前の夏、NHKのテレビドラマ化されて放映されたときの弥勒丸の映像をもとに描いてみました。

ドラマでは真っ白な船体に緑色のラインと同じ緑色の十字マークをペイントされた船としてのみ描かれていましたので、この客船としての塗装は小説で書かれていた内容を元にわたしが想像したものです。

ドラマの船内シーンのほとんどが横浜港の保存船氷川丸でロケされており、そのため撮影用に造られた全長2メートルの模型も氷川丸をふた周りほど大きくしたスタイルに仕上がっていますが、なかなかよくできています。

氷川丸との違いは客室デッキが2層多いこと、救命艇が左右一隻づつふえていること、船尾楼が中央のハウスと繋がってより客船らしくなっていることでしょうか、もちろんファンネルマークも違いますが、ぱっと見は太らせた氷川丸といった感じ。

本来、原作者は弥勒丸を未完の日本最大客船樫原丸(27700トン)のような船をイメージしていたと思うのですが、このドラマの船は直立に近い船首といい、タイタニックのようなカウンタースターンといい、とても1941年建造とは思えないクラシカルなスタイルになってしまっています(わたしは好きだけど)。

この弥勒丸の撮影用模型はドラマ公開後しばらく日本郵船歴史博物館に展示してありました。いまでも同博物館に大事に保管されているようですが、残念ながら、公開の予定は無いそうです。

興味のある方はDVDになっていますので一度ご覧になってみてください。航行シーンはタイタニック並にCG合成されて本当の船のような出来栄えです。沈没シーンはちょっと胸が痛みますが・・・

Anton

戦争で一般の船が沈められるというのは、船好きとしては最も耐えられないことですね。1915年に、ドイツのU-20によって沈没させられた客船ルシタニアの悲劇を思い出します。それをきっかけに戦争は激化し、その後も一般の商船がずいぶん沈められました。もう二度とこんな事が起きないように願います。

Antonさん、おっしゃるとおりですね。わたしが商船への攻撃で真っ先に思い出すのはやはり疎開中の子供たちがたくさん亡くなった対馬丸事件です。あまりにつらすぎる出来事です。

駒ヶ林

一般船舶を沈めるようになったら、戦争も正義を振りかざして言うことができません。日本の商船隊は壊滅状態になりましたが、今に続くアメリカの戦略思想が良くわかります。

駒さん、商船を軍艦が沈めるなんてつら過ぎる話ですがそれが戦争と言うものの現実なんでしょうね。そんなことがまったく無い世の中に早くなってもらいたいものです。

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