7月26日 バンクーバーに向けて出発
英語のできない私たち夫婦だけで、果たして無事にこの旅を終えることができるかという不安と、20年前に亡くなった写真家星野道夫が愛したアラスカを訪れることができるという期待を胸に、17:00発のカナダエアでバンクーバーに向けて出発する。
まず成田空港での発券手続きに手こずる。船名、都市名、zipまで入力しなければならない。バンクーバーでアンカレッジ行きにトランジットする予定。乗船する当日でも間に合うのだが、トランジットに不安があったため、少し余裕を持たせてアンカレッジに一泊する予定だ。
しかし、案の定飛行機は15分遅れ、バンクーバーでアメリカ入国手続きに手間取る。もうだめかもしれないといらいらしながら待ち、やっとアメリカに入国してから必死に走り、搭乗口に着いたのが出発5分前だった。ヒヤヒヤものだったが、間に合ってほっとする。
しかし、アンカレッジに着き、スーツケースが出てくるのを待つが、妻のスーツケースは出てくるが、なんと言うことだろうか私のスーツケースは最後まで出てこない。ロストバッゲージだ。とりあえず、ゲストハウスアンカレッジインというホテルに向かう。
さて、どうしたものか。
着替えはすべてロストバッゲージの中だ。下着はおろか、防寒ウエア、そしてフォーマルナイトのためのスーツもない。楽しみにしているディナーにもいけないのかと思うとがっかりだった。
しかし、仕方がないので、とりあえず必要最低限の着替えを購入し、アンカレッジの街で夕食を取ることにする。アラスカに来てまで日本食を摂ることはないのだが、私たちが選んだのは日本食だった。これが、本格的でうまい。
7月27日 乗船
「Egan center」というホールのようなところにみんな集まって、ウィッテアにバスで向かい、雨の中の港に到着する。乗船手続きをすると、今度はすごいプレゼントが待っていた。私たちは、海側船室で一部眺めが遮られる部屋を予定していたのだが、何とバルコニーつきの部屋にグレードアップされていたのだ。旅行申し込みの際、「お部屋がグレードアップされるなら希望しますか?」と聞かれ「お願いします」と答えていたのが効いたようだ。
下がったり上がったり、まるでジェットコースターのように気持ちは上下する。いよいよ「Island Princess」に乗船し、ドキドキしながら部屋を開ける。広い、快適、清潔。バルコニーからの眺めも申し分ない。
昼はビールで乾杯する。心配していたロストバッゲージも夜遅く届いた。「Egan center」で、係の方に拙い英語で、ロストバッゲージが何とか船に届くようエアカナダに連絡してくるようお願いしておいたのがうまくいったようだ。
夜はすべて本格的にサーブしてくれるレストラン「プロバンス」でいただくが、メインのステーキは食べきれない。夜は普段飲んだことのないマティーニを楽しむ。船は最初の晩はかなり揺れる。
7月28日 ハバード氷河クルージング
朝、私は、トレーニングジムでストレッチの講習に参加する。英語は分からないが、皆さんのまねをして何とか30分を過ごす。
この日は、ハバード氷河クルージング。氷河から砕け落ちた氷が浮かぶ海を進む。私は、ミステリーを3冊持ってきた。ここのところ、「ドン・ウィンズロウ」という作家にはまっているのだが、旅行には『フンランキー・マシーンの冬』を持ってきたが、面白くて一気読みだ。帰ってからもウィズロウにはまりそうだ。
今日はフォーマルデーだが、荷物が届いて本当によかった。毎晩フルコースをいただく。こんな幸せがあるだろうか。
7月29日 グレッシャーイベイ国立公園クルージング
朝、ジムで30分ランニングマシーンで運動する。この航海のハイライトの日だ。
グレッシャーイベイ国立公園のクルージングだが、何というすばらしい光景だろうか。3000m級の高山は夏だというのに白く輝く雪を抱き、何万年と積み重なった雪は氷河となりゆっくりゆっくり滑り落ち続けている。その氷河の末端を、船はできる限り近くまで行ってくれる。大パノラマが私たちのものだ。すばらしい。
これまでは曇りや雨など天気はあまりよいとは言えない状態だったが、太陽が明るく輝き、このすばらしい景色を堪能させてくれた。一生忘れることのない思い出になるだろう。
7月30日 スキャグウエイ寄港
アラスカの本当に素朴で、昔ながらの街並みが残っている。私たちは、White Pass鉄道の旅に参加する。エクスカーションは、船のツアーデスクで申し込んだ。日本でもできたようだが、船に乗ってからでも大丈夫とアドバイスを受けたので、乗船してから申し込んだ。
White Pass鉄道は、ゴールドラッシュに殺到した人々が苦労して越えていった峠を登っていく登山鉄道だ。山あいの険しいところを列車はあえぐように登っていく。左側の車窓からの景色がすばらしいので、私たちはこちらの席を確保できた。列車はカナダ側に少し行った頂上で止まる。パスポートが必要だ。鉄道で往復もできるのだが、私たちはバスで帰るプランだった。バスで街に着いてから、街歩きを楽しむ。この後寄港する街に比べると、工芸品も手作りのすばらしいものが、そろっている。こういうことがあらかじめ分かっていれば、ここで手作りの工芸品を買い物しただろう。
8月1日 ジュノー寄港
バスでメンデンホール氷河に向かう。英語が分からず、不安だ。船から氷河の駐車場までバスでおよそ30分だ。バスは私たちを下ろすと、11:15にまた迎えに来るというシステムらしい。お迎えまで、3時間ある。
私たちは、片道1マイルの森の中の道をウオーキングして、氷河の末端まで歩いて行く。大きな滝も氷河の末端近くには流れ落ちている。天気もあまりよくないせいか、フリースとダウンを着ていても寒いくらいだ。のんびり、ゆっくり自然を楽しむ。バスでジュノーの街に戻ってから、Free wifiのあるカフェでお昼を食べて、娘たちに連絡したり、情報を収集したりする。東京都知事は、小池百合子さん。鳥越さんは思ったように票が入らなかったようだ。
8月2日 ケチカン寄港
最後の寄港地だ。ここまで来ると早いな、もう何日も船の旅は残っていないと感じる。ここでは、エクスカーションには申し込んでいない。街歩きの予定だ。
港からすぐのところがクリークで、鮭が遡上する姿が見られる。この街を出港すると、もうカナダの旅は終わる。クリーク沿いの街並みは、風情があり、多くの人々が行き交っている。ここで、お土産を買うことにする。
小さなロープウエイで丘の上に登ると、港には大きな客船が三隻停泊しているのが見える。すばらしい。
8月3日 終日航海日
この日は、バンクーバーに向かってひたすら航海だ。
しかし、下船の準備のための書類を書かなくてはならないのだが、英語の苦手な私たちには大変な作業だ。下船してから、乗り降り自由な一日バスのツアーに申し込んだのだが、これも書かなくてはならない書類があるのだがどう書くべきか悩む。 Princessのフロントやツアーデスクに相談に行き書類を仕上げる。
昼前には、レストランスタッフによる料理ショーがあり、厨房の見学ツアーへと続く。お昼は初めてレストラン「プロバンス」でいただく。夜ももちろん「プロバンス」だが、スタッフと別れを惜しむ。
8月4日 下船
朝、8:00に部屋を明けなければならない。6階のシアターに集合し、アナウンスがあるのを待って下船する。なんだかあっけない最後だ。しかし、バンクーバー到着だ。高層ビルが建ち並んでいる。
とにかくすばらしい体験だった。豪華客船は、巨大なホテルが海の上に浮いているのと全く同じだ。乗客をもてなすホスピタリティが考え尽くされていて、飽きない。
すばらしい食事、すばらしい風景、シアターでのショー、ジム、バー、カジノまである。英語の苦手な私たちでも何とか楽しく過ごすことができた。こんな贅沢をしていいのだろうかとふと思う。が、チャレンジしてよかった、忘れられない思いでづくりができた旅だった。