夫婦二人で旅行しましたが、これまで2回のクルーズを経験していますがいずれも旅行社主催の団体ツアーでした。今回は3回目のクルーズで、クルーズの要領をおおよそ会得していることと、この船がフリースタイルのクルーズなので団体行動する意味があまりないと思い、IACE社を通じた個人旅行にしました。それ以外の航空券、ホテル、オプショナルツアーなどすべて個人で手配しましたので団体旅行と比べて費用が大幅に安くできました。(このクルーズでは日本の旅行社の添乗員付きの団体ツアーが18名で催行されていました)そのため、過去の2回は費用の安い内側の部屋を取りましたが、今回は期間が長いこともあり、バルコニーつきの「ミニスイート」を予約してみました。
この部屋は想像以上にすばらしく、内側室のほぼ2倍、広いバルコニー、くつろげる広いスペースなど申し分ありませんでした。このような部屋を体験しましたので、今後クルーズで内側の部屋をとることはないでしょう。その格差は価格以上と感じました。
ノルウェージャン・スター号(以下、N.S.)はカジュアル船であり、しかもフリースタイルを最大の売り物にしているので、確かに客層は大衆的ですし、すべてにおいて自由な行動が取れます。これを良しと感じるか悪しきと感じるかはまさに個人の好みの問題で、このようなクルーズも有りだとは思います。ただ、私はクルーズ旅行にある程度の贅沢さと豪華さを期待しますので、この船のレストランやドレスコードの考えについてはあまり賛成できず、このスタイルのクルーズは今回限りとするつもりです。やはり、程度の差こそあれ、型にはめられた伝統的なスタイルはクルーズの重要な要素だと思います。
船の内容については過去の2回のクルーズ船と同等で、不快感は全くありませんでした。船室やトイレなどの公共スペースの清掃など完璧で、船内の絨毯などの汚れも無くよく管理されていました。すべてのレストラン入り口では常時担当者が消毒スプレーを持って待機しており、ワッシャワッシャ(wash,washの意味?)といいながら入場者全員の手を消毒することを徹底していました。トイレも清潔で、洗剤、ペーパーなども完璧で、衛生面をかなり重視していることがわかりました。ソフト面は大衆的でしたが、ハード面は他船と比べて遜色はありません。
また、船内イベントなどはヨーロッパ船とは雰囲気が異なり、アメリカ的な要素満載でしたが、言葉の問題もあり日本人には多少無理がありました。私は英語の日常会話はある程度できますが、ショーや船内説明などの英語はネイティブの乗客を対象にした超早口で、ほとんど理解できませんでした。船内新聞やレストランメニューも日本語皆無ですので、英語の不得手な方には少々荷が重いのではないでしょうか。でもクルーズ本来の航海そのものの楽しみやビュッフェレストランを目当てにする方であれば問題は無いと思います。最大限クルーズ船を楽しみたい方はやはり団体旅行で旅行されるほうがよいでしょう。
私にとって個人でのクルーズ旅行は初めてでしたので多少の不安はありましたが、空港から港までのバス移動、最初の乗船手続き、最後の下船手続きなど順調で、想像以上に簡単でした。要するに、出発前の事務手続きを含めた準備を正しくしておけば、クルーズは陸での移動を考える必要がないので、個人旅行にふさわしい旅行だと思います。
クルーズ船の船内のレイアウトはこれまでの船とほとんど同じでした。多分これまでのクルーズの歴史であらゆる部分に徐々に改良が繰り返されて、共通ともいえる現在のクルーズ船の姿にたどり着いたのでしょう。よほど個性的な船で無い限りほとんどかわらないのではないでしょうか。 レストランはビュッフェ含めて10ケ所あり、内容もよかったですが、やはりビュッフェレストランは常時かなり混雑しており、ざわざわした状態でした。その反面他のレストランはかなり空いており静かでしたので、私はもっぱらビュッフェ以外を利用しました。コーヒー好きの私にとって時間制限の無いこれらのスペースは天国状態でした。
航海・寄港地に関する感想
このパナマ運河通過のクルーズは以前から一度は行って見たいと思っていたパナマ運河の通過を最大のテーマとしており、それ以外にメキシコ4ケ所、コスタリカ、コロンビア、キーウエストの7ケ所に寄港する航海でした。寄港地を中心に記述します。
カボサンルーカス
船からは小船に乗り換えて陸にあがり、港付近を散策。周囲にはみやげ物屋、飲食店などがひしめいており、たいへんにぎやか。ボートや周辺観光などの営業者の勧誘が激しかった。
ここの海岸は、映画「猿の惑星」で見たラストシーンのロケ地で、船からの遠景でもその場所であることがすぐにわかった。チャールトンヘストンが馬で移動している時に、ニューヨ-クの自由の女神像の上半身が岩陰から姿を現すあの衝撃のラストシーンが目にうかんだ。
プエルトバリャルタ
港近くにスーパー「ウオールマート」と「ショッピングセンター」があるので寄ってみた。日本のホーメセンターに似て品数も豊富だし価格も安く、規模も大きいのでメキシコの田舎町でもかなりの生活水準であると感じた。
ウアトルコ
港周辺はみやげ物店などが多いが総じて田舎町の様子
プエルトチャパス
港に隣接してクルーズ船の乗客目当てに民族舞踊のショーを見せる小屋があったが、おもしろくて30分ほど見る。
その後10$のシャトルバスでダウンタウンへ行き散策するつもりだったが、暑いのと街がゴミゴミしていたし、帰りのシャトルもわからないので車窓から町を見ただけでバスから降りずにそのまま港に引き返した。帰路の途中、バスの故障でストップ。15分ぐらい道路わきで待ち、代替バスで港へ戻ったが文句らしいことを言う乗客は皆無。このようなことがあっても不思議ではない町ということか。
プンタレナス
港付近を散策。5分ほどのところに町らしき場所があったのでぶらついた。ただ、港付近は警官数人が巡回しており、周囲は何となく危ない雰囲気。後でわかったのだが麻薬などの密貿易が頻発するらしく、旅行者などは単独ではあまり歩き回らないほうがよさそう。まわるならバスを利用した集団行動にすべき。
パナマ運河通過
運河の入り口にはあまり船がなく、スムーズに進入したが、多分通過指定時刻があるのでその時刻までは離れたところに待機しているようで通過時の混雑は全くなかった。
遠くのパナマ国の中心部と思われる方向に高層ビルが乱立しているのが見えた。運河のおかげでかなり裕福な国と想像。
通過時間は入り口・出口ともおよそ2時間。出入り口内の移動は電気機関車が左右から4台でワイヤーで牽引、横方向の位置調整はやはり電気機関車が船首・船尾に各2台で引合いながら調整。今の時代からするとかなり旧式の設備にみえたが、現在すぐ横に建設中の第二パナマ運河では大幅なシステム改良がなされると思った。岸壁との最小間隔は1mほどで無事故で通過する熟練さには感心した。
前日にクルーズ船内でパナマ運河建設に関する映画をみたので、運河の構造や建設時の苦労、政治的な背景などがおおよそわかり、改めて先人の偉大さを実感した。
カルタヘナ
船のオプショナルツアーに参加し、旧市内を観光。最初にサンフェリペ砦の近くで下車して写真撮影の後移動し、旧市街を徒歩で散策して再びバスに乗って港に戻った。(全体で3.5時時間) 新市街は遠景のみであったが高層ビルが多く見え、大きい町である。港湾町としては南米でも有数の規模の港と感じた。旧市街は狭い路地が多いが割ときれいで、古い町並みがよく保存されていた。
キーウエスト
以前から行きたかった場所であったが、このクルーズ船はこの島に寄港する航路をとっている。私の場合、これが数あるパナマ運河クルーズの中からこの希少のクルーズ船を選んだ理由の一つであった。
船のオプショナルツアーに参加し、ヘミングウエイの家を中心にまわった。H家に行く途中、周囲は緑に覆われたすばらしい高級住宅地。H家には十匹以上の猫が内外に優雅に寝ていた。
ダウンタウンはとてもにぎやかで活気があり、やはりアメリカフロリダ州の一部なので近代的な町であるが、古い雰囲気をできるだけ残す努力が見えて、印象のよい町であった。出港後、船からセブンマイルブリッジが少しでも見られるかと期待したが残念ながら見えなかった。
クルーズを終えて
全体を通じて、このツアーは期間が長いこともあり多少疲れたが、パナマ運河通過は長年の夢の実現であり達成感は十分であった。この運河は今年が完成後ちょうど100年目にあたるが、単に二つの地点を水路で結ぶだけではなく、高低差を持つ特異な運河で、当時としてのさまざまな工夫、最高の技術が投入された運河であった。近い将来第二パナマ運河が完成するが、さらに利便性の高い運河になることが期待される。
マイアミで下船後、なかなか訪れることもないマイアミで2泊し、市内を2日間かけてじっくりと見てまわったが、アメリカの大都市の中ではベストスリーに入るであろうと思ったほど素敵な町。そして今回はマイアミの滞在を含めた18日間のクルーズ期間中全く雨が降らず、天候にはとても恵まれた。